古くは低音への音域の拡張を期待される楽器だった。音楽教会では合唱の伴奏楽器として使われた。音程が正確にとれること、楽器の構造がシンプルであることから、トロンボーンによるハーモニーは非常に美しく、人間の声ともよくブレンドする。また、トロンボーンの音色は、様々な楽器の中で人間の声に最も近い音色だと言われている。スライドを操作するという構造上の理由から、早いパッセージは苦手である。逆に、音程を連続的に変化させるポルタメントは得意技と言ってよい。
古典派の時代まではオーケストラでの出番は少なかったが、大規模な編成が要求されるようになるとトロンボーンも加わるようになった。多くの場合、トロンボーン3本(アルト・テナー・バス各1、またはテナー2・バス1)にチューバの4声セットで使用され、美しいコラールを奏でたり、あるいはチェロやコントラバス、ファゴットなどの低音楽器とユニゾンで和声を充実させたりした。またホルン群とのユニゾンも多い。独奏はトランペットやホルンと比較すると少ないが、独自の音域と音色によって、静かな場面で独奏が用いられることが多い(モーツァルトの『レクイエム』など)。しかし強奏時においてはオーケストラの他のパートを圧倒する威力を持つ。19世紀後半から20世紀初頭にかけてはコントラバス・トロンボーンも用いられた。
他の楽器に比べると独奏者、独奏曲のどちらにも恵まれておらず、一部の演奏家が精力的にレパートリーを拡大しているものの、ソロ楽器としての一般的な認知は低い。早いパッセージが苦手なことがその大きな理由だろう。ただし現代では重音奏法や超高音域・低音域、素早いパッセージなど特殊奏法の開拓が幅広く行なわれている。
また、同種の楽器によるアンサンブルが非常にさかんな楽器の1つであり、最も一般的な形態はトロンボーン四重奏である。
その他の分野 [編集]
ジャズではディキシーランド・ジャズの頃からすでに代表的な地位を確立し、ビッグバンドのホーン・セクションの一員としてだけでなく、独奏楽器としても活躍の場も多かった。そしてその後のスウィング・ジャズなどの時代ではバンド内の主役楽器として活躍していたが、ジャズのスタイルが変化していくにつれて、次第に主役としての地位を他の楽器に渡すことになる。
楽器の調性は変ロ調(B-dur)だが、楽譜はピアノなどと同じく実音で書かれる。低音部譜表が一般的だが、高音のパートではテナー譜表・アルト譜表も使われる。オーケストラでは曲中で譜表が変わることは少なく、1番がアルトまたはテナー譜表、2番がテナー譜表、3番(バス)が低音部譜表というのが一般的である。吹奏楽においては基本的に低音部譜表に記され、高音部分に稀にテナーあるいはアルト譜表が用いられる。英国式ブラスバンドではバストロンボーンのパート以外は移調楽器として扱われ、実音に対し長9度高いト音譜表で記譜される。注意されたいのは、低音域について、管長が長くなるにつれてポジションの間隔が広くなっていくため、迂回管が2本あるバストロンボーン以外の楽器ではヘ音記号下第3線のH(一オクターブ下も同様)を演奏することができない。しかし、強制倍音と呼ばれる奏法を用いることにより、「無理をして唇を開けに開けて瞬間的にHの音を奏する可能性がないわけでもない。」(村田厚生)
種類 [編集]
トロンボーンは、その音域・機能などによって以下の様に分けることができる。また、テナートロンボーンやF管アタッチメント付テナートロンボーン等を、管の内径(ボアサイズ)によって太管、中細管、細管と細かく呼び分けることもある。その際、スライドのマウスパイプ側とジョイント側で異なるボアサイズを組み合わせたものはデュアルボアと通称される。
音域による分類 [編集]
ピッコロトロンボーン [編集]
ピッコロトロンボーン(piccolo trombone)は、テナートロンボーンより2オクターブ高いB管の楽器で、管長はピッコロトランペットと同じである。非常に珍しい楽器で、使われる機会はめったにない。また、この楽器は無理矢理作ったものなので、音程が悪い。主にトランペット奏者が使う。
ソプラノトロンボーン [編集]
ソプラノトロンボーン(soprano trombone)は、テナートロンボーンよりも1オクターブ高いB管の楽器で、B管のトランペットと管長が同じである。そのためトロンボーンというよりはスライド式のトランペットといった趣きだが、スライドトランペットに比べるとボアやベル、用いるマウスピースが大きく、音色もより太く暖かい。現代ではあまり使われない。
アルトトロンボーン [編集]
アルトトロンボーン(alto trombone)は、テナートロンボーンよりも小ぶりで、標準的には4度高いEs管である。5度高いF管、さらにはD管の楽器も存在する。B管の迂回管や、トリルキィを持つものもある。人の声とよく溶け合い、合唱付のオーケストラ曲や、トロンボーンアンサンブル曲などで用いられることが多い。また、製造するメーカーによって仕様が大幅に異なるので、一口にアルトトロンボーンといっても、楽器によって大きく音色が変わってくる。
テナートロンボーン
テナートロンボーン(tenor trombome)は、最も基本的な構造をした、トロンボーンの代表格とされる楽器である。B管で、テノール・トロンボーンともいう。音域的には、男性の声と最も近いといわれる。しかし、トロンボーンの代表格であるテナーだが、軽音楽以外の分野ではその座をテナーバスに譲ってしまっている。その理由としては、第1倍音と第2倍音の間の音域であるヘ音記号下第一線のEsから下第三間のH(1オクターブ下も同様)までが演奏することが出来ないことが挙げられる。また、スライドを最大限に伸ばす第7ポジションを用いる場合、小柄な人は手が届かず、紐を使わないといけない場合が有る。また、余裕を持って手が届く場合でも、離れたポジションから第7ポジションへ素早くスライドさせるには相当の訓練が必要である。
F管アタッチメント付テナートロンボーン [編集]
F管アタッチメント付テナートロンボーンは、テナートロンボーンに1つの追加のバルブを持たせた楽器である。バルブを使用する事により、テナートロンボーンが出せる最低音(E)の長3度下のCまで音域が広がるため、日本国内では、テナーバストロンボーンという呼称が広く普及している。このためか、F管アタッチメントが付いていないテナートロンボーンよりも、ボアやベルが大きい楽器が多い。
F管アタッチメント付テナートロンボーンの仕組みとその利点 [編集]
上述のテナートロンボーンの問題を解決するのがF管アタッチメント付テナートロンボーンである。F管アタッチメント付テナーはテナーのベル側ジョイントのすぐ上や、チューニングスライド(B管)にF管アタッチメントを装着した楽器で、F管のバルブを操作してF管を迂回させることによって管長を増やし、完全4度音を下げることによって、演奏できなかった音域が演奏できるようになるというシステムである。また、この仕組みの副産物として、腕を伸ばさないといけない第6・第7ポジションの音も、第1ポジションや第2ポジションといった近いポジションで演奏できるようになった。
F管アタッチメント付テナートロンボーンの短所 [編集]
F管アタッチメント付テナーには短所もある。
テナーに比べ重量が増す。
テナーに比べ楽器の構造が複雑になるので、F管アタッチメント未使用時でも抵抗感が増す。
F管アタッチメント使用時と未使用時の音色に差が出る。
一部の機種ではベルから後ろが長くなる(オープンラップ)。
テナーに比べ値段が割高になる。
これらは、いずれも1つの管というシンプルな構造だったテナーにF管を組み込んだことで発生するものだが、特に3つ目の短所は直管楽器であるトロンボーンにとっては軽視できない。このため、せめてF管使用時だけでも抵抗を減らそうと、F管をなるべくストレートにして抵抗を減らしたオープンラップタイプも登場したが、今度は4番目の問題が発生した。しかし、近年ではS.E.Shires社やEdwards社、Bach社等がバルブを取り外してテナートロンボーンにすることの出来る楽器を製造していたり、S.E.Shires社がバルブの未使用時はテナーと同じ構造になるバルブ(スルーボアバルブ)を開発したりした為、この問題は完全に解決したと言えるだろう。また、ドイツ式トロンボーンではバルブをチューニング管に組み込むのが一般的な為、バルブ無しのチューニング管と差し替える事により容易にバルブの使用を選択できるようになっている。
ある程度熟練した奏者だと、F管の使用の有無でほとんど音色に差が感じられないが、やはり多かれ少なかれその差は現れる上、吹奏感がF管使用時とB管時で大幅に異なるため、F管アタッチメント付テナーを嫌う奏者もいる。そのため、一般的なトラディショナルロータリーだけでなく、セイヤーバルブ(アキシャルフローバルブ)、ハグマンバルブなど、吹奏感や音質が均一化されるように様々なバルブが研究・開発されている。
従来、ヘ音記号下第3間のHをF管アタッチメント付テナーで演奏するときは、通常よりも長く抜くことによりE管の管長にして対応していた。だが、近年ではドイツのタイン社がテナーバスにさらに追加のアタッチメントを加えて、煩雑な操作を必要とせずにヘ音記号下第3間のHを吹奏を可能にしたモデルも出現している。
あまり低音域を用いないジャズやポップミュージック奏者は、テナーで済ませてしまう場合が多い(そもそもこうした分野で用いられる管径の細いタイプのトロンボーンでは、F管アタッチメント付テナーはほとんど製造されていない)。逆に管弦楽や吹奏楽、ブラスバンドでは圧倒的にF管アタッチメント付テナーを使う奏者が多い。
バストロンボーン [編集]
バストロンボーン(bass trombone)は、テナーやテナーバスのそれらよりもやや大ぶりな楽器であり、より太いボアとより大きなベルを持ち、1つまたは2つの追加のバルブを備える。調性は同じである。詳細はバストロンボーンの項を参照。
コントラバストロンボーン [編集]
コントラバストロンボーン(contrabass trombone)は、テナーやテナーバス、バスのそれらよりも3度から5度低い楽器で、長いスライドを操作するためのハンドルを備える。また、2重のスライドを持つ1オクターブ低いB♭管の楽器を指すこともある。混乱を避けるために、前者は時に「F管バストロンボーン」と呼ばれる。現代ではあまり使われない。詳細はバストロンボーンの項を参照。
これに非常に近い楽器としてチンバッソ(後述)も存在する。
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